漆塗りの技術を専門に扱う漆工(しっこう)職人集団の古一(こいち)漆工。

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こぼれ話

ひとつひとつを丁寧に

昨年6月から古一漆工に加わった坂本くん。気が付けば、もう一年が経ちます。
工房では黙々と作業をしていることが多く、普段はあまり多くを語るタイプではありませんが、せっかくなので、この一年を振り返って少し話を聞いてみました。

大学院では日本史を学び、戦国時代を専門に研究していたという坂本くんは、当時使われていたものへの興味から独学で漆を塗ったりしているうちに、古一漆工にたどり着いたのだそうです。
伝統工芸の世界は、その4文字からなる特別な響きとは裏腹に、ときに斜陽産業と呼ばれる厳しい世界。それでも、自分の手でその時代のものに携わり、さらに未来へ残していくという仕事に惹かれ、古一漆工の門を叩いたとのこと。

歴史を学ぶことと、職人として手を動かすこと。一見すると異なる道のようにも思えますが、長い年月を経て受け継がれてきたものを未来に伝えるという意味では、どこか通じるものがあるのかもしれません。

一年経った今の心境を聞いてみると、
「ようやく、少しわかってきたぐらいです」
と苦笑しながらの控えめな答え。

古一漆工の坂本くん

古一漆工の仕事は、一つの工程を覚えたら終わりというものはありません。扱う素材も違えば、季節や気候によってその状態も変わってしまう。一見して単純そうに見える作業であっても、同じ作業であっても、その都度適切な判断が求めらる仕事です。そうそう簡単に口を大きくすることはできないといったところでしょうか。

「でも、聞けばなんでも教えてもらえるので、やりやすさはあります」
「聞かないと、逆に怒られるんで」

よくある職人世界の、背中を見て覚えるではないんだそうです。新しく商品をつくることが仕事ではなく、『修復』することが仕事となるわけですから、わからないまま作業を進めて取り返しのつかないことになっては一大事。お客様からお預かりした唯一無二の仕事、失敗することは許されないわけですからね。
なので、わからないことはすぐに聞く!すぐに教える!というのが親方のモットーでもあるようです。

大きな社寺建造物や仏具の仕事に携わっていても、まず任されるのは目の前の一部分で、なかなか全体を把握することは難しく、どこのどの部分を作業しているのかわからないこともしばしばあったりするようですが、

「任された部位ひとつひとつを丁寧に仕上げていくことが今の僕にできる仕事なんで」

と、これまた謙虚に話す姿に、坂本くんの職人としての一年目が少し垣間見えたような気がしました。

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