漆塗りの技術を専門に扱う漆工(しっこう)職人集団の古一(こいち)漆工。

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漆の壁は硬くて高い

漆が硬化した後の硬さは9Hにも及ぶと言われることもあるそうです。スマートフォンの保護ガラスなどでよく見かけるあの硬さの表記ですね。
文化財の修復なんかでもよく目にする亀裂のような虫食いの跡。木材に寄生していた虫が木から出ようと思っても、漆の硬さに負けて出るに出られず、横に食い進んでいってしまうのかな〜。なんて一人ごちながら、解体した木材を丁寧にチェックしていく親方。

そんな虫食いの跡を木屎(こくそ)やパテを用いて埋めていく修復作業。写真はパテによる修復のものですが、重要文化財はもちろん、お客様の要望によって、木屎を使って充填(じゅうてん)していく修復作業も行なっていきます。

木屎(こくそ):生漆(きうるし)に米糊と炒った檜(ひのき)の粉を練り合わせて粘土状にしたもの。

綺麗な面にするためにパテや木屎を使っていくわけですが、それぞれに適した手法や技能が求められることになります。当然、木屎の使用には技能的にも予算的にもハードルが上がります。木屎はなかなか乾かないから時間もかかり、修復箇所の状態を見極めて、練り具合を調整したりしながら何度も塗り重ねるように時間をかけて埋めていかないといけません。

虫食いの修復02

パテにしても、サーフェイサー(通称サフ:塗装前に使用する下地処理用塗料)やカシュー塗料を(乾燥の早い油性漆系塗料)使う工程をしっかり見極めてそれぞれの適した状態にしていかなければいけない。
パテ使ってサフ、サフ、最後に漆。最初に木屎を使ったら最後まで漆、漆、漆でいかんと相性悪いから乾かん。などなど、親方の頭の中にはいくつもの最適解が備わっていることに驚きます。

古一漆工の職人には、お堂の中のもの、漆が塗られている全てのものを修復できる技能が求められることになりますからね。漆なんてペンキみたいにして、ちょっとばっかし丁寧に塗ったらええだけ違うん?なんて思われてる方もきっと多いと思うんです。もちろんそんなことなくて、漆を塗ること自体も難しいんですけど、漆を塗るための下地をどうつくるかも、その出来に関わってくる肝心要な工程で難しいんです。

虫食いの修復03

親方は軽口でよく言います。「なんでもできる人になってね〜」
パテしか無理、木屎は使えないとか、漆しかできへんとか、下地しかできへんとかでは、仕事にならない。車で例えるなら、軽トラから高級車、トラックに至るまで修理して走らせられるぐらいの技量の幅が欲しいと言うことなんだそうです。

小さな仏具の修繕から、お堂全体の修復まで手がける古一漆工では、完成イメージからしっかり逆算して、木地や下地を理解して、それぞれに応じた漆を塗る状態を整えられる力が必要で、これも漆職人が備えなければいけない技量ということになります。

立ちはだかる漆の硬さや壁の高さに苦労するのは、虫も職人も同じといったところですね苦笑。

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