研ぎ作業が進んでいく阿弥陀如来像。手と下半身がほぼ済んで、これから上半身の研ぎ作業ということで、微妙に色が異なるのがお分かりいただけると思います。
仏師の先生に、「宗派によって衣の掛け方や形も異なったりするんですよ。両方だったり、片側だけにかかってたりとか」なんて教えていただいている時に、親方が、「柔らかい衣やなぁ」「細かいヒダも多いしぃ」「先生の彫りは繊細やなぁ」、なんて繰り返して最後に、
「職人泣かせの衣やなぁ〜」
って言っていたのが思い出されます。
簡単に言えば、彫りの技術が高くて細かいことで、漆を塗った時にそれを潰さないように、これまた細心の注意を払って作業を進めていかないといけないから、想像以上に大変だということです。
イメージしてください。粘着性のある塗料、濃い絵の具でもいいです、細かい凹凸のあるものに塗り重ねていったら、その凹凸が埋まってしまうじゃないですか。それと同じことをしてはダメなんです。彫りを美しく見せないといけない漆塗りにおいて、彫りを潰してしまったら意味がないということですね。

研ぎの作業においても、ただこすればいいわけじゃなく、衣の柔らかさを保ちつつ、漆が塗り重ねられていくことを見越して、エッジを際立たせていかないといけないとかもあったりして大変です。
この時点で本物の布見たいでしょ。ピローんってめくれそうですw
もちろん、衣だけに限ったことではなく、仏像全体において、仏師の先生がその技量で繊細に細かく仕上げれば仕上げるほど、漆職人もまたその技量が問われていくことになるというわけですね。
塗料のように塗って乾かすのではなく「塗って固める」のが漆。
固めるのに、柔らかくしないといけない。座禅のお姿とも相まって、なんともまぁ、とんち話みたいなお仕事です。